T中さんの写真。

T中さんの写真がたくさんさざなみにやってきた。会ったこともないこの人の写真を初めてみたのは、11月にあった愛生園の作品展。かつては愛生会館で大きく開催してたみたいだけど、今は日出会館の一角で、写真や短歌、絵画、木工、陶芸、あとは職員さんたちの作品を一緒に展示している。
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その作品群の中に、T中さんが過去に撮った写真がまとめてあった。しっかりと覚えている。なぜならその写真があまりに衝撃的だったから。ピンクのふくよかな豚が二匹、クレーンのような高いところからロープで持ち上げられて船に積み込まれていく瞬間。お腹の柔らかい部分にロープがぐにゅんと食い込み、二匹を束ね、前足と後ろ足がぶらんと垂れ下がってされるがままの姿が写真に収められていた。こんな場面を残せたのはT中さんが豚舎で働いていたからに違いない。家畜と人との距離に当時を感じる一枚、他の写真も切り取る視線がユニークだった。そのあとしばらくして、T中さんの訃報が園内放送で流れる。「ブタの写真の人だ!」驚いた。
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そして年が明けて、T中さんが撮った写真をM井さんがさざなみに持ってきてくれた。
大きく引き伸ばされた作品はどれも味というかチャーミングさがある。日常で見落としそうな面白い部分や感動する風景を切り取った写真たち、もし当時にインスタグラムがあったなら、T中さんは楽しく使いこなしていたりして。少しずつ、さざなみに飾ろうと思います。(ちなみに歴史館には、俺のペット、という写真があった。)
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posted : 2021.02.20
喫茶店の日々 長島を歩く さざ波立つ人たち