1月/長島ストーリープロジェクト

今日からさざなみが始まった。朝から効率を考えて労働するのはテトリスを組み合わせるようで、頭も身体も動き始めて日常に戻ったなと感じる。どろの展示を片付けたら、抜けるような広さを懐かしく思うも少し寂しくて、店のしつらいをどうしようか、あと定まらないメニュー表もどうにかしたいな、など気持ちだけは堂々と先頭を切ってゆく1月6日。とりあえず植物にたっぷり水をやった。

 

長島の道は細かなところまでしっかり整備されているけれど、思いの外入り組んでいるので何度通っても迷ってしまう。自分の心の狭さを自覚する1月16日。だけど、どうしても身体が受けつけないから困ったもんだ。長島に暮らす人の気持ちを色んな媒体で見聞きするたび、自分の胸に手をあて、自分の生活はどうかと考える。

 

昨日の夕方に降り出した雨が心配だったけど、今朝は海も凪いていい天気。晴れ女の信頼と実績がまたひとつ積み重なった。こんな日は、何かが穏やかに満ちていく。干潮を狙って歩くごつごつした海辺、道なき道をこまばやしさんの後ろについてフラフラと行く。歩いたな、長島。1月19日。仕入れついでの焼きドーナツがもっちり美味しい。人に会うのはやっぱり楽しい。

 

 

夕方には小豆島が現れた。牡蠣のシーズンは船の出入りが激しい。あの人よく来てくれるな、という時、いつ、どんな風に声をかけてみようかななんて考えながら、話しかけてみたりやっぱり見送ってみたり、心のなかで小さな駆引きをしている。1月24日、積ん読は確かにここぞというタイミングがやってくる。

 

ついに小さなキエーロを手に入れた。早速明日からさざなみの生ゴミを入れてみる。野菜をどこまで食べれるか、実験のような気持ちと、ここまで食べたぞという達成感を楽しんでいる。おかげでスタッフのみんなは、芯とか根っこまで、これどうする?と聞いてくれる。うれし恥ずかしな心持ち。
風の音がすごい、1月28日。明日はどんな天気なんだろう。

 

大事なニットがうっかり洗濯機から出てきた時は絶望、気を取り直して夜風で満月干し。1月29日、長島のとある庭にてレモンのおすそわけにあやかる。発泡スチロールで稲穂を作り軒下干しする80代の現役センスオブワンダー。考え続ける人は道端の種を拾っては発芽させている。庭には小さな苗たち、そんなこと思いついたこともなかった。

 

夜、時々猫のような鳴き声が聞こえるなあと思っていたら、どうやら下の階の子どもの泣き声らしい。あらあらと思いながら先に眠る。
近頃、家を出るときは車のフロントガラスが凍っている。子どもたちの部屋は車のすぐ隣。水筒に入れたお湯で氷を溶かしてアイドリングせぬようさっさと出発する。朝、起こしてませんように。1月30日、鹿がずっとこちらをみていた。
posted : 2021.01.30
喫茶店の日々 長島を歩く さざ波立つ人たち