犬のロリー。
Kちゃんと呼ばれるY中さんはコーギーのロリーを飼っている。その大きさは並みではない。小さな飼い主を自分のリードでグイグイ引っ張っぱるので、Y中さんはまるでマイケルジャクソンのようにのけぞっている。人をみると短い足で地面をカリカリ蹴って喜びをぶつけに来るが、ロリーが大きく顔を振りかぶると、腰を落として出迎える私はとんかちですくって殴られたみたいに身体がひっくり返ってしまう。しかし、なでろ、なでろ、と尻尾の短いハート柄のお尻を向けて短い足を放り投げる姿はなんとも愛くるしい。健康なY中さんが診療棟をブラつくと、出会う人には大体「ロリーちゃん元気か?」と飼い主より犬をねぎらう言葉をかけられるそうだ。(私もついついロリーのことを先に書いてしまった。わはは)
.
ロリーはY中さんの亡くなった夫のヒロシの「ロ」と前に飼っていたリリィの「リ」をとって名付けられた。夜の散歩をする頃には、シカやイノシシ、タヌキ、アナグマ…野生の気配が一斉に漂うからロリーは吠えるのに忙しい。朝は回春寮への坂道を駆け下りようとするから、ここ最近の寒波で凍った道に滑ってしまわないかY中さんは心配している。
.
去年の春に歴史館の雑多な資料を見せてもらっていた時、自治会資料からペット許可の申請書が出てきた。きっと動物を飼うことに対するいざこざが起きたのだろうと想像する。たくさんの人が暮らす長島で「自治」が生まれることは当然だよなあとしみじみ思うのだ。さざなみに来るお客さんから聞く限りでは、ネコやトリと暮らしていた話は多い。
.
飼い主より通いで長島に来るM井さんにロリーが懐くのでY中さんは「うちの手の撫で加減がよくない」と話すのだけど、私はうすうす気づいている。愛生園の看護学校に通うNちゃんがさざなみでバイトしてた時、連れてこられたロリーは私の横をすり抜けNちゃんめがけて飛びついた。忘れもしないぞ。あいつは若い女の子が好きなのだ。わかってないな、そんなことしてたらモテないんだからな、ロリー。